

| 「気田川 けせらせらの巻」その1 |
第一話 「僕が白茶色の気田川に漕ぎ出した訳」
しょぼしょぼしてきた目を擦りながら、会社を後にしたのが木曜の夜10
時。「これから家に帰って荷物をまとめ、出発は11時半位かな?高速に乗
るのに2時間ちょっと、うーん、起きて運転できるのだろうか?」そんな事
を考えながら電車に揺られる。家に着いて、大急ぎで荷物をまとめ、どかど
かと車に放り込み、ばたばたと出発する。時間は予想通り11時半。さすが
にこの時間だと一般道も空いている。快調々々、これなら何とか東名に乗る
までは起きていられそうだ。途中のコンビニで、夜食と朝食を買い込み順調
に東名に乗り込む。流れも安定しているので、夜食のおにぎりを頬張る。で
もこれが失敗、30分もしないうちに眠気が襲ってきた。「まあいいや、ど
うせ一人だし(けせらせら)」と言う事で、その後現れたPAに入り、熟睡
モードとなる。おやすみなさい。
金曜日、朝5時半。もうちょっと眠っていたかったが、気合いを居れて起
きあがる。ごそごそとタオルを探し、顔を洗うためにトイレに向かう。戻り
がけに買ってきた缶コーヒーを飲みながら、モバでメールを作る。PAの名
前がわからなかったので、空欄のままUPしに向かう。あいにくグレ電が無
かった。なんてこった。もう一本缶コーヒーを買って出発する。運転しなが
ら缶コーヒーと菓子パンの朝食。寝不足で朝日が目に滲みる。しばらくはぼ
ーっと運転するが、良く考えたらどこのICで降りるか決めていなかった事
に気が付いた。当初の予定では、吉田ICで降りて大井川沿いを遡り、峠を
越えて気田川の上流に出ようと考えていた。しかし、一人で下るには、バス
路線の有無や、バス停の位置と時間も確認して置かないと、楽しく下ったは
良いが帰れ無くなる。運転しながら地図を広げようとしたが、ちょっと危な
そうなのでPAに入る。車を止めるとなんと目の前にグレ電があった。さっ
き書いたメールにちょっと文章を追加して、メールをUPする。地図を確認
し、袋井ICで降りて国道を北上し、途中でバス停を探すことにする。まだ
まだ先は長い。
高速を降りて国道を北上していると、天竜駅があった。バスの路線図でも
あるかと、立ち寄ってみるが何も無い。まだ8時半なので観光案内所も開い
ていない。あきらめてまた北上を続ける。そして運命の分かれ道、ではない
が、秋葉神社の上社と下社の分かれ道。出発地点は下社の方だが、帰りの足
を確保するため、上陸地点側の上社方面に向かう。と、あれっ、と思う間も
なくバス停を通り過ぎる。あわててUターンして時刻表のチェック。大体1
時間に一本しかない。時間をメモして、ふと隣の建物を見ると「遠州バス営
業所」。なーんだ、灯台もと暗し。早速営業所を訪ね、上陸地点から出発地
点に戻れるかを尋ねる。しかし、帰ってきた返事は嬉しいやら悲しいやら。
遠州バスだと、この営業所の前から秋葉神社の下社までしか行けない。上陸
地点から営業所の前までは、JRバスの路線がある。秋葉神社下社から出発
地点までは、秋葉バスが通っているらしい。バス3本乗り継げば何とか戻る
ことが出来そう。なんとかなるさ(けせらせら)、とつぶやきながらバスの
時間を調べるために、車は北へ南へ、東へ西へ。出発地点に到着したのは、
丁度お昼だった。
川を眺めながらお昼を食べる。透き通った水がきらきらと流れて行く様子
は、見ているだけでも気持ちが良い。いつまでもぼーっと眺めているわけに
も行かないので、ぼちぼちと出発の準備にかかる。艇を組んで、荷物を積ん
で、ロングジョンに着替えて、時計を見たら1時をとっくに過ぎていた。ち
ょっとのんびりしすぎたかなと思いつつ、静かに流れの中に艇を漕ぎ出す。
あくびをしつつ、綺麗な水を堪能しながら川を下る。水量は少なく、慎重に
コースを選ばないと、すぐに座礁してしまう。でもまあ、水が綺麗なら歩く
のも苦にならないから不思議だ。
しかし、喜びは長くは続かなかった。前方を見るとどうも川の様子がおか
しい。ある地点から川の右半分が白茶色に濁っているではないか。原因は川
岸の採石場からの流れ込みのせいだった。さっきまでとはうって変わって、
憂鬱な気分で川を下る。下るにつれ白濁も川全体に広がって行き、やがて全
面真っ白な川になってしまった。水面下の様子が全く分からなくなり、何度
も船底を打つ。なんてこった。早々に下るのを諦め、広そうな河原に上陸。
まだ2時半。正味1時間ほどしか漕いでいない。でも、こんな川は下っても
、面白くもなんともないのでしかたがない。テントをたて、着替えをすませ、
お湯を沸かしてコーヒーをいれる。「採石場は夕方には運転をやめるだろう
から、明日の朝には綺麗な流れが戻って居るだろう。そして、明日は早めに
出発すれば、濁る前に下れるだろう」、半分は希望的観測。そんな気持ちを
胸に、車を回収するために、バスの時刻の検討に入った。
第一話 終わり
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